事実を正しく伝える


こにふぁー氏の 提案レベルの記事 を読んで、提案の手前にある「事実を正しく伝える」ことの重要性について触れたくなった。テクニックは語らない。

VALORANT という 5 vs 5 の爆破 FPS をプレイしていときに、事実を正しく伝える大切さを強く学んだ。もちろん、その先にある提案も。 このゲームは見ず知らずの 5 人がひとつのチームとなり、爆弾を設置して爆破するか敵チームを殲滅することによって勝敗が決まるゲームだ。

ゲーム内ではこのゲームの「上手さ」によって決まる「ランク」という概念がある。 上手さとは、ゲームに対する理解だけでなく、マウスとキーボードによるキャラクターの操作スキルやコミュニケーションスキルが含まれる。

始めたてのプレイヤーはアイアンと呼ばれるランクに割り振られ、上手くなるにつれて、アイアン→ブロンズ→シルバー→ゴールド→プラチナ→ダイヤモンド→アセンダント→イモータル→レディアント のようにランクが上がっていく。

基本的な上手さはエイムのようなキャラクターの操作スキルに大きく依存するが、ランクが上がるにつれて高いコミュニケーションスキルが求められる。

このゲームにおけるコミュニケーションは大きく分けるとピン、キャラクターボイス、テキストチャット、ボイスチャットの 4 つがある。

  • ピン: Google Map のピンみたいなもので、マップ上にピンを刺した上で何らかの意思表示が行える。「今からここに行きます」「ここに敵がいました」みたいな。
  • キャラクターボイス: 「ありがとう」や「ゆっくり行こう」といった予め決められたセリフを話す手段。
  • テキストチャット: 名前の通りテキストコミュニケーションが行える。
  • ボイスチャット: グループ通話みたいなものでチームのメンバーとバーバルコミュニケーションが行える。

このようにいくつかのコミュニケーション手段が提供されているが、効果的という観点で優劣を表すなら以下の感じ。 キャラクターボイス<ピン<テキストチャット<<<<超えられない壁<<<<ボイスチャット

VAROLANTのプレイヤーのうち、ボイスチャットを利用している割合は体感で3〜4割くらいだ。 1つのチームに平均で 2 人くらい。もちろん全員喋ることもあれば、誰も喋らないといったこともある。

このボイスチャットを利用するかどうか、そしてボイスチャットを通じて話す内容がプレイヤーのランクによって大きく変わるのだ。

さて、ここまでどうでもいい前提知識の話なので訪れた方の9割が離脱してる頃かと思う。すまない。

事実を正しく伝える

言わずもがな、最も意思が伝わらないコミュニケーションの状態はボイスチャットを使わないことだ。 とはいえ、本エントリでは VALORANT はボイスチャットを駆使して戦えという話をしたいわけではないので、ここは深掘らない。みんないろんな事情があるからね。

ボイスチャットのようなコミュニケーションで伝えることは、大きく分けると「事実」と「提案」がある。ようやく提案が出てきた。

VAROLANT では全てのマップで 2 つ以上の攻略ルートが用意されている。中には 4つのルートが存在するマップもある。 攻撃側は基本的に集団で動くのに対し、防衛側は各ルートに満遍なくチームのメンバーが配置されることが多い。

ひとつのチームは 5 人いることから、どこかのルートが手厚いこともある。 そのため、攻撃側としては防衛の手薄なルートを攻めた方が攻略の成功率が高いのだ。 ルートを進んでるうちに敵を視認したり音を聞くことによって敵の数がわかるが、このときのボイスチャットにおいて「事実」を述べるなら「敵がいた」になる。

この事実を伝えるボイスチャットひとつとっても、ランクが違うことによって伝える情報量が変わる

下位のランクでは「ジェットが見えた」や「スキルが飛んできた」といった報告が多い。 逆に、上位のランクでは「メイン(場所)にジェット(敵エージェントの名前)がオペレーター(ワンパンできる武器)を覗いてた」みたいな場所や状態の情報を乗せるのだ。

「敵がいた」よりも考えられる次の打ち手が明らかに多くなる。Aルートに敵が居たからBルートへ行ってみよう、オペレーターを覗いてるからスキルを使おう、みたいな。「敵がいた」だけであれば、思い浮かばないような根拠のある打ち手がたくさん考えられるわけだ。

「バグが発生した」だけではなく「AuthService.java の login 関数で Null Pointer Exception が発生した」と伝えた方が、調査するファイルや操作がわかりやすいだろう。「電車が遅れてる」より「電車が 35 分遅れてて 11:30 の到着になる」と伝えた方が、次の予定を立てやすいだろう。

「事実」を観測し適切に伝えることは、次の打ち手を考えるために行うのだ。その答えとして「何もしない」があるかもしれないが、詳細であることに損はない。提案は事実(もっと言えば課題)の上にしか成り立たない。でっかい提案をするのにその土台となる事実が貧弱であれば提案は通らない。

事実を正しく伝えることが正しい提案に繋がる

このように事実を正しく伝えられるようになって初めて効果的な提案ができる。

提案スキルのレベルが高くても、その提案のコンテキストを十分に伝えきれずに効果的でない提案に止まるケースをよく見るため、まずは事実を正しく理解して正しく伝えられるようにしたほうがいいという話だ。 なんらかの提案をしたとき、提案を受け取る側から質問を返される場合には、正しく伝えられていないことが多い。

もっと言えば、これは提案に限った話ではなく、すべてのコミュニケーションの基礎になる。報告・連絡・相談を効果的にするベーススキルなのだ。

「事実と主観を分ける」のような小手先のテクニックがたくさんあるので、まずは調べてみるとよいでしょう。私は小手先のテクニックだけで生きています。

他にもたくさん書こうと思っていたが、VALORANT の話ばかりしてしまったので、別の記事にする。